🔍 家事とは何か?
家事とは一体何だろうか?料理、掃除、洗濯、買い物──日々の生活の中で、当たり前のように誰かがやっているこれらの行為。だが、それらは「誰が」「どのように」担っているのか、その背後にある構造を私たちはどれだけ意識しているだろうか。
現代では、家事は「家族が快適に過ごすために行われる、他人に委託可能な無償労働」と定義されることが多い。つまり、家事とはボランティアではなく、代替可能であるにも関わらず、金銭的報酬が発生しない労働である。
🧹 女性が家事を担うようになった背景
なぜ家事は「女性の仕事」とされてきたのか──そのルーツは産業化と高度経済成長期にある。日本で「専業主婦」という言葉が使われるようになったのは昭和初期。高度経済成長により男性の収入が世帯全体を支えるようになると、女性が家庭に入る「モデル家族」が理想とされた。
男性は外で働き、女性は家を守る。こうしたジェンダー役割は、当時の社会制度や教育方針とも相まって強化されていった。そしてそれは、家事労働を「当然のもの」「評価に値しないもの」と見なす風潮を生んだ。
💼 二重負担としての家事労働
現代日本では、共働き家庭が一般的になった。しかし、「女性の家事負担」はほとんど減っていない。実際、有業(仕事を持つ)で配偶者がいる女性は、有償労働と無償労働を両立させることで、総労働時間が長くなり、結果的に睡眠時間が短くなるという調査結果もある。
つまり、現代女性は「二重の負担」を背負っているのだ。これは個人の努力や工夫でどうにかなる問題ではなく、社会構造そのものの見直しが求められる。
⚡ 電化製品=家事の軽減?という誤解
電化製品の登場によって、家事は“楽になった”と思われがちだ。しかし現実はそう単純ではない。
たとえば、洗濯機が普及しても、洗濯の回数や量が増えており、洗濯にかかる手間はむしろ増えている。また、炊飯器が登場したからといって、調理時間が劇的に減ったわけではない。炊飯中に副菜や主菜を同時に作る必要があるからだ。
唯一確実に減ったのは「裁縫」だ。洋服が既製品として市場に流通するようになり、家庭で衣服を作る必要がなくなったからである。
🍳 家事の「水準」が上がったことによる時間の増加
戦後から昭和期にかけて、食生活や衛生水準の向上に伴い、家事に求められる「基準」も上昇した。一汁三菜を基本とする食事が定着し、調理の品目数が増加。結果として、調理に要する時間も長くなった。
また、住宅構造の変化により、掃除機が必要な面積が広がるなど、掃除にも時間がかかるようになった。箱膳からちゃぶ台、そしてダイニングテーブルへの移行も、食器の量や洗い物の時間に影響を与えている。
つまり、家電による効率化が進む一方で、「家庭のクオリティ」が上がったことで、家事の総量が減っていないという矛盾が存在する。
🛍️ 家事の市場化と革新技術
現代では「市場化」が進みつつある。市場化とは、これまで家庭内で行っていた作業を、外部の有償サービスに委ねることを指す。たとえば、掃除代行や料理キット、宅配サービスなどがその例だ。
しかし、家事の「市場化」や「革新技術」によって家事負担がすべて軽減されるわけではない。むしろ、その導入には金銭的コストが伴い、すべての家庭が享受できるわけではない。
また、費用節約と時間節約はトレードオフの関係にある。費用を抑えようとすれば時間がかかるし、時間を節約しようとすればコストが増す。この関係性が見落とされがちである。
🧠 家事能力と家族構成の影響
家事の量や質は、個々の家事能力や家庭の構成によって大きく異なる。子どもの人数や年齢、世帯の形態(単身、核家族、三世代同居など)、妻の雇用の有無といった因子が、家事時間に与える影響は大きい。
また、家庭によって「家事水準」の捉え方が違い、「うちはこれくらいが普通」と思っている内容が、他の家庭では高水準すぎるということもある。これにより、必要以上に時間をかけてしまう傾向も否めない。
👨 日本男性と家事
日本の男性の家事時間は、世界的に見ても非常に少ない。掃除や洗い物、洗濯といった家事は一部手伝う程度で、「メインの家事担当」になるケースは少数派である。
「手伝う」という意識のままでは、根本的な分担にはならない。家事は「共有すべき責任」であり、「お手伝い」ではないという認識の変化が求められている。
👦 子どもと家事
子どもに家事を任せることは、教育的な意味合いも大きい。自分のことだけでなく「家族のために行動する」ことを学ぶことは、自立心や社会性を育む。
一方で、小遣いと引き換えに「手伝い」をさせる家庭も多い。これは動機づけとして有効ではあるが、家事が“労働”であることを理解する一助にもなるだろう。
🏡 家事の再評価が社会を変える
家事は、社会の中で最も見えにくい労働のひとつだ。しかし、それなしでは家庭も社会も成り立たない。家事労働の負担をどう軽減するか、誰がどう担うのかを見直すことは、ジェンダー平等、働き方改革、福祉政策すべてに通じる重要なテーマである。
技術革新や市場化だけでは解決できない「家事」の課題。そこに光を当て、見直し、再定義していくことが、これからの社会に必要なのではないだろうか。
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